Aquamarine Shock!

安全地帯:銀色のピストル

更新日:2010/01/17

80年代の香りたっぷり

安全地帯の中に含まれているナンバー。ここで収録されている個性派揃いの36曲(!)の中で、はっきり言って埋もれずに済んだのは陽水とのコラボで有名な"夏の終りのハーモニー"と、めぞん一刻のOPにも使われた"好きさ"くらいなもので、他は単発の曲としては扱いが低いように思えます。まあ、もしかしたらそのものがそういうアルバムなのかもしれません。

この曲も、一回ライヴで歌われてはいますが、それも少なくとも私が知っている中ではのナンバーを中心に集めた"LIE"だけでした。ですがこの曲はいろいろな物が詰まっています。まずは、曲全体から80年代っぽさがプンプンしてくるってところから。

最初に控えめな前奏が入りますが、ここのリズムは曲全体の「キー」になっています。そしてこの頃の玉置ヴォイスで特徴的な、息が混じったような甘く控えめなAメロが入ります。途中Brassの合いの手も入り、安全地帯サウンドの変化を感じさせます。そしてAメロ2回の後がサビですが、ここでがらりと変わります。

サビのメロディーはいわゆるアウフタクトでミーレミーと始まりますが、その次の小節の最初の強拍は「ファ」で、2小節1フレーズの中で一番音が高くて、後はドシーラーファ…と下がっていきます。この強拍にものすごく力強いインパクトがあり、第3位の聞かせどころです。続いてもう一回ミーレミーファードーシーラーミと。この4小節だけでもものすごくメリハリがある感じです。ここで最後にコードがCメジャーになって救いを求めるところも80年代っぽい感じ。サビの後半は、やっぱりアウフタクトで始まってミーレミーファーと同じメロディーをなぞるのですが、ここで調子を崩して、3拍目の中強拍に入る前にシンコペーション的にメロディー全体の最高音「ソ」を持ってきます。そしてファーーーミーレードーと下がるのですが、さっきの最高音を決めること以上に、むしろこの「ファーーー」が大事で、ここで保つところが第2位の聞かせどころだと思います。またミーレミーファードーシーーーーーララと締めくくります(ただし、ファーのコードは今までのDmではなくBdim)。そしてこの最後3音が最大の聞かせどころで、「シーーーーー」と保って「ララ」でうまく抜くのがものすごくカッコイイ。特に、1番とラストの泣くくぅぅぅぅせにの「ぅぅぅぅ」に、玉置氏の情感がものすごくこもっています。正直、この一連のコーナーはこの曲の聞かせどころのすばらしさ故に作られたようなものです。

advanced study

ただでさえカッコイイのですが、しかしながら、この曲は先の"LIE"でこそ生きたようです。こっちは、演奏のサウンドそのものはあまり変わりありませんが、Vocalの歌い方に気合が入っているというか、より自由な情感が込められている感じです。まず2番以降、サビの最後のミーレミーのリズムを・ミレミーと微妙に変えてサパッっとした感じにしてみるのが目立ちます。一方で、「ファーーー」「シーーーーー」の保ち方はちょっと弱いのですが、最後の最後の「くーーーーーせに」が力が入りすぎて、ちょっと荒れたところが却ってクールになっています。観客も「きゃー」+「わー」で大盛り上がりでした。当時のライヴの映像がほしいところですが、残念なことに、DVDはあるものの新品はどこも切れていて、中古では1万数千円とものすごく値段が高いのです…

情報

『銀色のピストル』:作詞:松井五郎,作曲:玉置浩二。

収録アルバム:『安全地帯』(1986)など。

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