Aquamarine Shock!

安全地帯:あの頃へ

更新日:2010/01/17

不遇なのか恵まれているのか

一時期は酒のCMで有名になったこの名曲ですが、この歌はシングルリリースされただけで、安全地帯のオリジナルアルバム、つまり、"Remember to Remember"(安全地帯T)から"安全地帯 〜雨のち晴れ〜"の中には収録されていないのです。その一方、ベスト盤では常連です。

というのも、この歌がCDとして発表されたのは1992年12月。一方、本格的な活動休止に入る前の最後のアルバムである"安全地帯 〜太陽〜"のリリースは1991年12月。要するに、出るべきアルバムが無かったんですね。もっともシングルとしても、この歌が初登場する"あの頃へ/地平線を見て育ちました。"は、1991年11月に"いつも君のそばに/俺はどこか狂っているのかもしれない"(どちらも"安全地帯"に収録)が出て以来の久々のリリースです。安全地帯としての活動が大分手薄になっていた頃なのでしょう。ちなみに、その次のシングルにも"ひとりぼっちのエール/あの頃へ"としてしっかり収録されていますから、実は登場回数は少なくありません。

壮大さ

この曲の構成は、「A-A-サビ」というシンプルなもの。Aメロは抑え気味に、サビは壮大に…という王道を突き進んでいるのですが、サビは案外スパッと切ってしまう。ここまで、伸びやかで落ち着いているんだけど、ちょっとトリッキーなメロディーラインで流れています。それを2コーラス続けた後、間奏の途中で突然、あのこーろへーーーと一番重要なメッセージが入るのです。ここが最初の山。そして最後にサビをリフレインするんだけど、そこで最後の所をちょっと変えて高音に持って行く。ここが2番目の山。そして最後の(連れて行きた)いーの音の余韻が消えて完全にバックに置き換わった頃に、またあのこーろへーーー。ここが最後にして最大の山。

カラオケだと、いかに壮大に歌うかが試されます。3つの山を利かせられれば、他が今ひとつでもOK、ってな感じ。

セルフカヴァー

玉置氏がよっぽど好きなのか、この歌にはanother versionがいくつか存在します。

ベスト盤『安全地帯 アナザーコレクション』では、1992年の日本武道館Liveの『あの頃へ』が聞けます。オリジナルがト短調なのに大して、こちらは半音下げた嬰ヘ短調。こちらは伴奏がstringsでしっとり決めてくるので、パンチが効いていた頃のVocalのノビとの共演を楽しむのが吉。裏のGuitarはちょっと荒い感じです。Vocalのメロディーラインは変わらず。

いちどソロを経て、再び安全地帯名義で出た2003年の"反省/あの頃へ"は、構成も同じ、演奏には雅楽で知られる東儀秀樹が加わり、伴奏は賑やかになります。このversionで私が最大のポイントとして挙げたいのは、決して単なるあのこーろへーーーではなく、1995年版や1999年版にも出てくる最後のサビの(あたたーかいー)あのこーーろ↑ーへーのアップ。私は1995年版・1999年版よりもこちらを先に聞いたのですが、この変化球を最初に聞いたときはドキッとしたものです。ラストのあのこーろへーーーは2回、しかも2回目はあのこーろ↑ーーへーーーとメロディーラインを変えてくるのですが、それもかすんでくるというもの。

1995年のライヴアルバム・"T"は、最初からPiano伴奏で攻めてきて、FluteとStrings、あるいはSaxophoneが飾ります。ヘ長調に下がってますし、このころから明らかに声が変わり始めています。構成はオリジナルと同じですが、最後のサビの時に(あたたーかいー)あのこーーろ↑ーへー、そして一番最後もあのこーろ↑ーーへーーーと上げてきます。ここは新しい山になるところです。

1999年に玉置浩二名義で出ている"ワインレッドの心"に出てくるversionは、Vocalにノビが無くなった分、逆に温かみが出たというか、全く聴き方が変わってくると思います。ホ短調にまで下げられ、随分スローテンポになり、サウンド全体が大人しくなりました。こでも1995年版と同じラインです。ただ全体的に大人しいので、あのこーろ↑へーーーと「ろ」が上がっても盛り上がるという感じではないと思います。

その他、1993年の"unplugged live!"のclosing numberもこの歌ですが、そちらは1992年武道館Liveと似ている感じです。ただし、DVDで見ると紙吹雪の雪が舞い、これで安全地帯が終わってしまうと言う感慨とともに、感動的なシーンとなっています。まあ、その後安全地帯が活動再開するのを知っている今となっては、その感慨も…という感じですけれども。

情報

『あの頃へ』:作詞:松井五郎,作曲:玉置浩二。

収録アルバム:『安全地帯ベスト2 〜ひとりぼっちのエール〜』(1993)など。

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